| |

| |


| |



last update 17/07/06
ジロ2006の各賞ジャージを着用し、ミラノに凱旋した選手たち。
圧倒的な大差でジロを制したイヴァン・バッソ。総合優勝はかなり早い段階で現実的となっていたものの、マリアローザ仕様のヘルメットを身にまとったのは最終日のみだった。
やはりマリアローザは別格で、バッソはこの日一番声援を受けていた。当然、最後のスプリントには関係の無い選手だし、この日に関しては安全に走り切ることが重要。つまり頑張る必要は無い。それでも、観客は口々に「Vai ! Ivan Basso !」と叫ぶ。特に、4歳とか5歳くらいのちびっ子たちが、このフレーズをプロトンが通り過ぎるたびに叫んでいたのが印象的だった。親父に肩車されて、物心つく頃からジロを見に行き、大勢の観客から万雷の拍手を送られるマリアローザの選手を自分も必死に応援する。きっとこうやって、「大きくなったら俺もマリアローザを着てミラノに凱旋するぞ!」と子供心に刻み込んで、ひとり、またひとりと夢をつかむためのスタートを切っていくのだろう。バッソもきっとそういった子供時代を経て、フレンドリーなチャンピオンへと成長していったんだな…と、温かい気持ちがこみ上げる情景だった。ジロを制覇し、ピンク色をポイント的に配した特別仕様のサーベロにまたがった彼の周りには、祝福と笑顔が満ちあふれていた。
祝福ムードに染まるミラノの周回コース上で、イタリアの親子連れがマリアローザを一生懸命に応援する姿があちこちに見られたことは、未来のスーパースターを育てる文化的基礎がイタリアに根付いているといった印象を自分に与えるには十分だった。ジロが開催され続ける限り、イタリアは常にロードレース界で活躍するトップスターを生み続けるだろう。


自分はイタリア語が不十分なので帰国するまで知らなかったが、バッソとシモーニには終盤の山岳ステージが引き金となって大きな亀裂が生まれたらしい。最後、ポディウムで総合成績の表彰がされる場面でも、二人の間には少しピリピリとした様子があったようだ。自分は表彰も見ておらず、そういった事情については全く知らなかったのだが、とにかく感じたのは、少なくともバッソとCSCは誇らしげに凱旋行進をしていて、自分たちの成功を噛み締めている、といった印象だった。彼等が綺麗に隊列をなして先頭を突き進む様子を見ているだけで、ただのファンである自分も、誇らしさを分けてもらったような、素敵な気持ちになれた。なんていうか、彼の勝利には一遍の曇りも感じなかった。そういう雰囲気があの場にはあった。
当然マリアローザこそがジロ・デ・イタリアで最も尊敬を勝ち得るジャージであり、大会そのものの象徴としてマリアローザカラー、つまりピンク色の演出はそこかしこに見て取ることが出来る。マリアローザの周りにはいつも人だかりが出来、祝福の嵐に包まれる。
そんなマリアローザ以外にも、ジロには素晴らしい活躍をした選手を讃える素晴らしい賞やジャージが用意されている。マリアヴェルデもその一つ。山岳で最もアグレッシブな走りをした選手が獲得すべき賞であり、その意味で今回このジャージを獲得したファン・マヌエル・ガラーテは、大会最高峰チマコッピを制し、フェダイア、ポルドイ、サンペレグリーノという伝説の山々を越える難関第19ステージにて勝利を飾るなど、キング・オブ・マウンテンを讃える賞に恥じない素晴らしい活躍を見せた。チームジャージとは違う、スペインナショナルチャンピオンを讃える赤×黄色ジャージに身を包み、ジャージの色のように燃えるようなアタックを見せ続けた彼の存在感は、ジロの最中にも日増しに大きくなっていったような印象が強い。
ワンデーレースに強さを発揮するタイプのスター選手が勢揃いするクイックステップにあって、ガラーテはステージレースで活躍することが出来る希有な存在だ。今大会もベッティーニのマリアチクラミーノ獲得に十分なアシストをしただけでなく、ステージ勝利も獲り、マリアヴェルデも獲得。最終的には総合成績も7位という好成績を収めている。



ガラーテのクイックステップへの移籍が決定した当初、少し「?」といった気持ちになった。サウニエルに所属していれば常時エース級待遇が望めそうだし(05シーズン終了間際にシモーニのサウニエル加入が決まったので、仮にガラーテがサウニエルに残っていたとしても、結果的にはジロなどではシモーニの山岳アシストになる可能性が高かったかな)、スペインチャンプとしてはベルギーチームよりスペインチームのほうが大切にされそうなイメージがあったからだ。しかしジロが終わった時点では、ガラーテの選手としての価値はかなり上昇気流に乗っている。ベルギークラシックを第一に考えるクイックステップへの移籍は、結果的に大成功だったという印象が強い。この後もベッティーニをしっかりアシストしつつ、自身もポイントポイントで勝利を収める姿が見られるのではないか。来年以降も是非クイックステップで活躍して欲しい選手だ。

スペインチャンピオンを表す赤×黄のビブショーツを身にまとい、ヘルメットもスペインチャンプ仕様となっているガラーテ。
ジャパンカップ03で来日経験があり、当時はランプレの選手だった。当時からクライマーとして名が通った選手だったが、スペインチャンプジャージを身にまとってマリアヴェルデを獲得した今年は、(ジロ終了時はシーズン半ばと言った感じになるが)これまで以上の成功を納めた年と言えるのではないだろうか?
一般に、グランツールの各賞ジャージは、総合優勝を讃えるジャージと山岳で活躍した者を讃えるジャージの他に、スプリンターを讃えるために用意されたジャージがある。ジロではそれがこのマリアチクラミーノだ。
ツールにおけるスプリントジャージはマイヨヴェールであり、近年エリック・ツァベルやロビー・マキュアンといったピュアスプリンターがジャージ獲得に全力を注いでいる。対してジロにおけるスプリントジャージ、マリアチクラミーノは、その獲得者リストを見るとマイヨヴェールとの違いがはっきりする。06年からから02年までさかのぼると、パオロ・ベッティーニ(2回)、アレッサンドロ・ペタッキ、ジルベルト・シモーニ、マリオ・チポッリーニ…と、ピュアスプリンターによる獲得競争がツールのように展開されているとは言えない状況だ。考えられるのはツールほどピュアスプリンターが集まらない・完走しないことや、ポイント配分の妙、ツールに比べて過酷な山岳ステージがジロでは多く設定されていることなどがあげられるだろうか。
獲得した選手の脚質こそ年によって大きく異なるものの、個人的に思うマリアチクラミーノ獲得者の共通点がある。偉大なるチャンピオンが獲得するケースが多い、ということだ。今年マリアチクラミーノを着た写真のベッティーニはその最たる例だろう。近年彼はワンデーレースで最も活躍したイタリア人選手だ。モレノ・アルジェンティーンの再来と言われたミケーレ・バルトリのアシストとして力をつけた後、バルトリを超える成績を収めることに成功しているベッティーニ。彼に足りないただ一つのタイトル、それは世界選手権だ。

ベッティーニを集団内で探すのはとても簡単だ。とにかく金色の特注ヘルメットが目立つ目立つ。小柄な選手なのに遠目から一発で判別が出来る。ヘルメット以外にも、アテネオリンピックゴールドメダリストを記念した装飾がそこかしこに見られる。SIDIのシューズ、セラサンマルコのサドル、TIMEのフレーム&フォーク&ステム、バーテープ…これ以上彼のロードレーサーが金色に染まるようなことがあったら…ちょっとダサくなってしまいそう。ダサくなる一歩手前の絶妙なさじ加減で金色装飾がされているかのように見えるけど、主に誰が中心になって金色プロジェクトは進められているのだろう?チーム主導か、それともメーカー側からか。もしくはベッティーニ個人の趣味だったりして。
プロローグで圧倒的な強さを見せ、今年のジロにコンディションを上手くあわせてきた様子がうかがえたサヴォルデッリ。残念ながら困難を極めた山岳ステージのせいで大きなインパクトを残せないままジロを走り終えたわけではあるが、プロローグから最終ステージまで、一度もこの新ジャージ「マリアブル」を手放すことはなかった。ただ、各賞ジャージを確保したとは言っても、昨年のマリアローザ着用者としては、今年のジロは少々残念な結果となってしまったことだろう。
マリアブルはこれまでマリアアッズーラとして親しまれてきたジャージと入れ替わりで設定されたもので、その影響で今年のジロはインテルジロポイントがなかった。マリアアッズーラと色合いは殆ど同じだろうけど、いくらか青が濃いような気がするのは自分だけだろうか?マリアアッズーラを着用するためのインテルジロ賞と大きく変わって、マリアブルはグランコンビナータ賞のリーダージャージとして登場した。プロローグから最後までサヴォルデッリが確保し、争奪戦も見られなかったため残念ながらインテルジロ賞の時よりジャージの存在感が小さくなってしまったような気がする。来年のジロで賞設定やポイント配分にどんな改良が加えられるのか、それとも今年と同じ方法で行くのか、ちょっと興味深いところではある。
いわゆるグランツールの各賞ジャージで欠かせないものと言えば、総合リーダージャージ・山岳ジャージ・スプリントジャージの三つで、それ以外のジャージは各レースの主催者による味付け的な要素が出てくると思う。その意味もあって、17年続いたインテルジロ賞=マリアアッズーラが今回グランコンビナータ賞=マリアブルへと入れ替わったわけではあるが、このジャージに関して言えば少々面白味に欠ける展開が出来てしまった訳なので、前述のように来年のジロでどのように主催者が味付けをするのか興味深いところだが、いずれにしてもジャージの威厳が保たれるような素晴らしい工夫がされればいいなと思う。

このジロ中に誕生日を迎え、とうとう32歳と選手生活晩年を迎えつつある「ベビーフェイス」サヴォルデッリ。来年またあの華麗なダウンヒルを見せつけ、総合争いを熱くして欲しい。下りで魅せる走りが出来るなんて、彼以外そうは見あたらないでしょう?